ここまで大きな企画となるとさぞや入念なものがあったのだろうと筆者は当初考えていたが、彼らの回答は驚きのものであった。一色さんによれば10月初旬に一色さんから畑田さんに対して「卒業式までに何かやろう」と、メールをしたのがキッカケだと言う。彼らの共通項として存在したのは「テレビを見ている感覚で演劇を見て欲しい」ということ。演劇というとどうしても堅くなって観覧するものとイメージしてしまうが、それを打破して本来の演劇の楽しさを示したかったと彼らは熱く語ってくれた。当初は「こぢんまりと楽しみたいな」と、彼らは思っていたが、岡先生に話したところ学年挙げた協力を得られるものとなり、更には生徒会をも巻き込んだ大きなものへと発展していったという。
歌あり、ダンスあり、映像あり、そして芝居ありの自由な表現力で、彼らが目指した「テレビを見ている感覚で演劇を見る」工夫を随所に施して、2010年1月23日に第1弾目である「孫泥棒」が公演された。この作品は一色さんが脚本・演出した「超ドタバタ・ワンシチュエーション・コメディー」で、お爺さんの90歳祝いのホームパーティーに現われた一番客が大泥棒で、その大泥棒がひょんなことからとんでもない願い事を引き受けてしまうことから始まる「笑って泣いての90分」であった。続く第2弾目は畑田さんが脚本・演出した「CONFUSION」という悲壮群像劇を2月13日に公演した。第1弾とは全く色の異なる作品で、高校生の創作とは思えない考えさせられる公演となった。
こうした畑田さん、一色さん中心とするメンバーであるが、それはその都度募集をかけるというもので筆者がお話を聞いた頃はまだ卒業式1部で公演する明確なメンバーも、公演内容の詳細も「未決定」状態であった。そこから今回、卒業式1部で公演されたような「演劇の神髄」を表すようなものが生まれることは彼らの天賦の才能ばかりでなく、二高生が有する団結力や、「クラスメイトや友達のために一肌脱ごう」という二高生の交友力の賜物であろう。