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2005年08月03日 開設    
2021年07月30日 更新

如月

日本こころ歳時記

違いを知る若き国際人へ贈る日本文化ガイド~梅が匂う~

 二月は暦の上では春…その春を告げる植物は梅。梅は冬の厳しい寒さに耐えて年の初めに咲くため、めでたい花として常緑の松や竹とともに慶木(けいぼく)とされている。寿命も長く梅の古木のなかには天然記念物に指定されている木もある。

 ところで梅の原産地をご存知だろうか?それは中国だ。その中国との交流はとくに万葉の昔に盛んで、梅も当時の渡来物の一つとして貴族階級に歓迎された。

 その証拠に『万葉集』には梅は百十八首も詠まれ、一番多い、萩についで二番目の数を誇り、代表的な万葉歌人の誰もが梅を詠んでいるが、なぜか柿本人麻呂の梅の歌はない。 梅の『万葉集』初登場は太宰府・大伴旅人の屋敷の梅見の宴で貴族たちが詠んだ三十二首(巻五)だ。当時、梅は大陸渡来の鑑賞花だった。言い換えれば貴族たちはその渡来花の高貴な匂いを嗅ぎ上等舶来!と酔いしれたのだろう。2.png

 たしかに梅には紅白があり、どこか風流な風情を感じさせる。その白梅が盛りを過ぎると紅梅が咲き出すが、その白梅と鶯をこよなく愛した江戸期の俳人は与謝蕪村。梅の色合いと匂いに反応する豊かな感性こそ、蕪村の魅力といえよう。

 詩人の萩原朔太郎は、その著作『郷愁の詩人、与謝蕪村』の中で蕪村のリリシズムの新鮮さを讃えている。芭蕉のわび・さびの哲学的な世界に比べ、蕪村の俳句には鮮やかな艶(つや)があり、華やかな潤いに満ちている。梅を愛した蕪村の辞世の句は…

   白梅の明(あく)る夜ばかりとなりにけり

 臨終の床に集まった弟子にこの句に「初春」と題をおきさない、と言った逸話にも艶やかな人柄が偲べる。

 ちなみに和英辞典で梅を引くとPLUMまたはUMEとある。また英語辞典でPLUMを引くとJAPANESE APRICOT=UMEとある。現在ではUME、HAIKU、KOBAN、TUNAMI、KARAOKE、KAWAIIはもう国際語だ。

 来月は三月…もうすぐ春。

 梅一輪 一輪ほどの暖かさ   嵐雪

 国際人とは自国の文化という鏡で異文化を映し“違い”を理解する事が第一条件だ。
 各民族が互いに違いを認め合ってこそ国際化といえよう。誇りをもって自己への認識を深め、相手国を理解するためにも、若人よ!確かな鏡をもとう!

S. Y. J