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2005年08月03日 開設    
2021年07月30日 更新

睦月

日本こころ歳時記

違いを知る若き国際人へ贈る日本文化ガイド~正月を祝う~

 欧米人の正月の挨拶は“HAPPY NEW YEAR”だが日本人は「おめでとうございます」と言う。なぜ“正月はめでたい”のか?我々は正しい月と書いて正月と読むが、それでは正月の素顔は見えない。形容詞ではなく「正す」という動詞で考えると正月の実相が浮かび上がってくる。

 言うなれば「正月」の七日間は心身を浄め新たな生命の誕生を願って万事を正しく整える月なのだ。各家々では門松を立て、その年の幸いをもたらす年神を迎える目印にする。門松は欧米のクリスマスの樅の木はその樹型から火・太陽・生命の象徴しているのと類似している点は興味深い。

 『民俗学辞典』によれば「正月は年の初めで年の神を迎え、新しい年の実りを祈る祭りの月」とある。この“実りを祈る”とはなにか?それは“実り”を“稔り”と読むと理解できる。つまり稔は“トシ”と読み“稲の稔り”をもたらす穀霊を示している。稲の豊作を司る神の訪問に感謝し、神がお宿りになる鏡餅を供える床の間のある部屋を清浄な祭りの場として整え、神とともに過ごす晴れの七日間なのだ。1.png

 この七日間を「松の内(うち)」と呼ぶが、松には“神の降臨を待つ”という意味もある事も見逃せない。長寿と繁栄の祈りの象徴=松竹梅で祝うのはそのためだ。だから気軽な“HAPPY NEW YEAR”だけでは済まないのだ。

 欧米人には正月は単なる通過点だが、我々には一年の始まりの重要な節目の日である。元旦は休日ではなく国の定める祝日になっているのもこうした背景があるからに他ならない。正月だからこそ、きちっと折り目を正す「お節料理」を食膳に供え、家族で祝い続けてきた“こころ”は忘れてはならないだろう。

 国際人とは自国の文化という鏡で異文化を映し“違い”を理解する事が第一条件だ。
 各民族が互いに違いを認め合ってこそ国際化といえよう。誇りをもって自己への認識を深め、相手国を理解するためにも、若人よ!確かな鏡をもとう!

S. Y. J