長月
日本こころ歳時記
違いを知る若き国際人へ贈る日本文化ガイド~月を観る~
皛畑の作物に感謝する十五夜の祭り
月々に月みる月は多けれど
月みる月はこの月り月
ここでいう「この月の月」はいうまでもなく十五夜の「中秋」の名月をさす。
わが国の暦は太陽暦へ移行するまで、月の運行を基準にする太陰暦だった。月々の満月を節目にするため、年の初めも元日ではなく、正月の満月の夜が年の境だった。
そのため日常でも月の文化は多岐にわたり月は農耕生活の基本だった。例えば民俗学ではハルゴト・オイゴトと呼ぶ三月十五日は地の神、田の神が里へ降りる日であり、そして十月十五日は山へ帰られる日とされていた。
ではなぜ旧暦八月十五日の日を名月と讃えてきたのだろうか。丁度、この頃は農作物の収穫時期のため、実りに感謝する日だった。つまりこの日はその年、収穫した穀物、野菜、果物を神仏へ供える、いわば野菜の初穂(はつほ)祭り。かつてこの日は稲穂に見立てたススキをはじめ、再生霊が宿ると信じられた里芋、団子、枝豆など畑の作物を供えた。
なぜ里芋なのか?それは縄文期に日本列島へ渡来した南方系の人種がタロイモを持ち込んだ。そのDNAがインプットされ、それが平成の今日まで受け継がれているのは驚きだ。
わが国の月の神は月読命(つくよみのみこと)。ツクは月、ヨミは数えるの意味…つまり月の運行を司る暦の神であり、農事を占う神でもある。だからこそ、「お月見」をする。江戸っ子も十五夜の月を仰ぎ、月のお陰に感謝し酒肴の宴を開いて残した川柳は「上戸にも下戸にもできる月見かな」。現代人の野菜摂取量は極端にすくない。月見の宴を契機に肉を控えて野菜の摂取に心掛けよう!
国際人とは自国の文化という鏡で異文化を映し“違い”を理解する事が第一条件だ。
各民族が互いに違いを認め合ってこそ国際化といえよう。誇りをもって自己への認識を深め、相手国を理解するためにも、若人よ!確かな鏡をもとう!
S. Y. J